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ケニア発、世界中の危機・災害時に不可欠な位置関連情報集約サイト、『ウシャヒディ(Ushahidi )』  市川 裕康

ケニア発、世界中の危機・災害時に不可欠な位置関連情報集約サイト、『ウシャヒディ(Ushahidi )』 市川 裕康


ハイチ、チリでの地震、フロリダでの原油流出事故、そしてパキスタンでの洪水等、次から次に起こる巨大な災害に立ち向かう危機対応サービスとして、「ウシャヒディ(Ushahidi)」(スワヒリ語で「証言」、「目撃者」という意味)という、あるウェブサービスの存在感が世界的に増しています。

 ウシャヒディは2008年の初め、当時31歳の女性弁護士、ブロガー、活動家であるオリ・オコーラ氏のひとつの小さな行為から生まれました。

 前年末にケニアで実施された大統領選挙での不正疑惑に対し、国内各地で暴動が勃発、報道規制が敷かれる中、オコーラ氏は現地での状況を絶え間なくブログに掲載していたのです。どの地域でどのような暴力事件が起きたか、被害状況等に関し、更新を続けていたのです。

 すぐに一人で情報更新することが追いつかなくなり、ブログに助けを求めました

「誰かエンジニアの人で、グーグル・マップス(無料地図情報サービス)を使って暴動発生箇所と破壊状況のマッシュアップ(融合)サイト作ってくれない?」

 すぐに二人のエンジニアが手を上げ、約3日間の週末作業で作られたソフトウェアが、危機災害時の情報集約ビジュアルサイト、ウシャヒディの始まりでした。

 機能は至ってシンプル。eメール、携帯電話からのショートメッセージ(SMS)、ウェブサイトからのフォーム、そしてTwitterから寄せられた現場での情報が、位置情報を添えて、ひとつのサイトに掲載されるというサービスです。

 緊急時になかなか手に入らない事件勃発箇所、救助の必要な場所等の情報が、数多くの現場の被害者、ボランティアから寄せられることで、時系列、地域毎に整理され、一覧での可視化が可能になります。

 ケニアで4万5千もの人に利用されたソフトは、後にオープンソースとして公開されました。メキシコインドでの選挙活動の監視に、戦争中の中東ガザ地区の武力行為の状況把握に、また思いがけないところではワシントンDCでの除雪作業等に到るまで、ウシャヒディは数多くの危機・災害の際に、公共的な目的で利用されるようになったのです。世界中のエンジニアにより改良が加えられ、延べ4000回以上のダウンロードがされました。

 世界的なスポットライトを浴びるきっかけになったのは、ハイチでの地震でした。地震勃発後2時間後には米国タフツ大学の学生ボランティアが中心となって危機情報サイトが設置され、被害状況の把握、そして多くの人命救助の為になくてはならないサービスとなったのです。

 緊急時の無料テキストメッセージの番号「4636」が急遽設置され、ラジオで国内全域に告知されると、地震発生から4日目には、既に約10万件のレポートが集められたのです。中には「〇〇地区のスーパーマーケットの中で被災者が瓦礫の下敷きになっています」というような人命救助を左右するレポートも数多くありました。

 

  2010年8月9日、ウシャヒディは新しい画期的なサービス、「クラウドマップ(Crowdmap)」を始めました。

 今までは無料ソフトをダウンロードし、レンタルしたサーバー上にホストするという技術的な専門性と費用がなければ設置出来ず、災害発生直後の迅速な対処のためにも、改善が求められていました。

 「Crowdmap」はインストール不要のウェブ上で即利用なサービスで、技術バックグランドのない人でも5分以内にサイトを簡単に設置することが可能となったのです。しかも、英語以外に中仏露、アラブ等、合計9ヶ国語でのマルチ言語対応も可能になりました(日本語は未対応)。

 現在もウシャヒディはオフィスを持たず、ケニア、南ア、アメリカ、ヨーロッパ等各地域に散らばる10名程度のスタッフ、そして数多くのボランティアにより運営されています。

 非営利型テック企業として、財団等からの助成金・寄付で運営がなされていますが、ウシャヒディは、設立からたった2年半の期間で、設立者たちが当初予想すらしなかったスケールでサービスが世界中で利用され、更に進化が続いています。

 ”地震大国”と呼ばれる日本でも、防災情報を共有するための先進システム構築へ向け、総務省が静岡県を補助する、というニュースが先日ありました。災害時に避難所や道路、ヘリポートなどの現状を関係機関がリアルタイムで共有できる、というシステムで、民間地図表示ソフト「グーグル・アース」も活用するとのことです。(8月20日 産経新聞)

 大胆な「クラウドソーシング」(不特定多数の”群集”(crowd:クラウド)にアウトソーシングすること)はそのリスクもあり、日本のみならずとも政府としてすぐに採用するのは難しいかもしれません。

 ただ、一個人の行動がきっかけとなり、小さな行為の積み重ねが国境を超え、大きな社会的インパクトを与えることが可能になりつつあることを、私たちはウシャヒディの事例から学べるのではないでしょうか。


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